秋田県横手市梅の木町18-9

「痛みの悪循環を遮断する(なぜ神経ブロックが効くのか?」

痛みの治療を専門にするペインクリニックを初めて受診した患者さんに、「ところでこの注射(神経ブロック)はいつまで効くのですか?」と聞かれることがあります。痛みを持つ患者さんにとっては切実な問題だと思いますが、答える方としてはちょっと困ってしまいます。というのは、神経ブロックは単なる痛み止めの注射ではないので、注射した薬(局所麻酔薬)の効果がなくなっても、痛みが出てこなくて、楽になったままのことがよくあるからです。実はそうなる事をねらって、あるいは期待して神経ブロックを行っているのです。ではなぜ、この様な事が起きるのでしょう?それを説明するのが「痛みの悪循環説」です。

痛みの感覚は知覚神経から脊髄を通り脳に伝えられますが、その時交感神経や運動神経にも刺激が伝わります。その結果、痛んでいる部位の血管や筋肉が反射的に収縮してしまい、血液の流れが悪くなり、痛みを誘発する物質(発痛物質)が出てきます。この発痛物質が再び神経を刺激し、痛んでいる部位の血流をますます悪くするという一連の悪循環ができてしまうのです。痛みの悪循環を断ち切るのに最も良い手段が神経ブロックです。神経ブロックは、痛みを直接取り除くだけでなく、痛んでいる部位の血流も改善させます。改善された血流のおかげで発痛物質は洗い流され、傷んだ神経などの修復も進みます。こうして痛みの悪循環が解消されると、神経ブロックで使った薬の効果が切れた後でも、痛みが楽になったままの状態になることがあるのです。もちろん、このような説明は痛みを持つ全ての患者さんに当てはまるわけではありません。痛みの原因や種類によっては神経ブロック後もまた痛みが出てきます。そこで、冒頭の患者さんのご質問「神経ブロックはいつまで効くのか?」に答えるために、次のような説明(神経ブロックの効果判定)を考えてみました。

1.超有効:神経ブロック後数日経っても痛みが出てこない。
2.まあまあ有効:神経ブロック後数日間痛みは楽だが、だんだん痛みが出てくる。
3.効果微妙:神経ブロック当日痛みは楽だが、翌日には元に戻る。
4.あまり有効でない:神経ブロック後1ー2時間位で痛みが元に戻る。
5.全然有効でない:痛みが少しも楽にならない。

1,2の場合は、神経ブロックの効果が期待でき、継続する事でさらに楽になる可能性があります。
4,5の場合は、痛みの原因の再検討や他の治療が必要な場合があります。
神経ブロックは実施している側から見ても不思議な魅力を持つ治療法です。「超有効」な患者さんをみると、このような治療法を考え出した先人の偉さをつくづく感じます。「有効でない」場合は、神経ブロックの限界を感じたり、自分の技術を疑ったりもします。いづれにしても、神経ブロック療法では治療に対する患者さんの反応を見ながら、その後の治療方針を決める必要があります。痛みの原因や種類を正確に見極め、適切な神経ブロックを実施することが、より多くの患者さんを痛みから開放する事につながると思います。

身体の痛みをやわらげる

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