秋田県横手市梅の木町18-9

「痛みのトラウマ」

痛みの治療を専門にするペインクリニックに、「予防的な神経ブロックはできないのですか」と言ってこられた患者さんがいました。開業して 1 年も経たない頃のある土曜日で、昼近くなり患者さんが来そうな雰囲気も無いので、ちょっと早目に店じまいしようかなと思っているところでした。数ヶ月前まで硬膜外ブロックの治療を受けていた患者さんです。椎間板ヘルニアが原因で、3年位前から両足のシビレとお尻から足にかけての強い痛みがあり、当時手術も勧められたほどでした。初めて来られた時は立っているのも辛い状態でしたが、硬膜外ブロックを週1回行って、10回目位で日常生活が楽になり、立ち仕事も途中で休まなくてもすむようになりました。その後、調子が良かったので治療せず経過観察していたのです。

「また痛くなりましたか?」と聞きますと、「いや、痛くはないのですが、また痛くなるのが恐くて⋯もし、予防的にブロック注射できるものならと思って来ました」

「残念ながら、全然痛くない方に予防的に神経ブロックをすることはやっていません」というと、がっかりされた様子だったので、「でも、もし痛みが少しでも出てくるようでしたら、いつでもいらしてください」と言いますと、少し安心された様子で帰られました。

人はあまりにも辛い痛みを経験すると、またいつ痛くなるかと心配になります。この患者さんのように、恐怖感を抱くようになる場合もあります。強い痛みや長く続く痛みはその人の辛い記憶となって残り、場合によってはトラウマ(精神的外傷)を与える事もあるのです。このような有害な痛みはできるだけ早く取り除く必要があります。病気の種類や状態によっては痛みを完全に取るのが困難な場合もありますが、それでも痛みを和らげる治療は必要です。通常の鎮痛薬で効果が無く、有効な治療法も無いような場合は、神経ブロックの治療を検討してみてもよいと思います。

ところで、治療で一旦痛みが治まった人でも、例えば腰椎に変形がある場合など、また痛くなることがあります。通常は「また痛くなってしまって⋯」と辛そうに受診されます。でも中には、「ちょっと早めに予防注射に来ました」と明るく冗談をおっしゃって受診される患者さんもいます。このような患者さんは、1〜2回治療を受けるとその後しばらく受診されません。こちらが忘れた頃にフラーっとやって来て、「今日もいつものやつ(ブロック)をお願いします」というような調子です。「これ以上我慢するとまた大変な事になってしまう」という状態が自分で分かるようなのです。つまり自分の体の具合を見ながら、自分で治療のタイミングを考えていらっしゃるのです。

痛みが再発したら、早目に治療を受けられることをお勧めします。予防注射はできませんが、軽い内に治療したほうが治りは早いようです。

身体の痛みをやわらげる

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